経営者の至言

経営者の至言 一覧

事業を成功させる最大のカギ 永守重信(第一三共社長)

  • 事業を起こす上で最も大事なのは、起業家精神が体中から溢れ出るほどに旺盛なこと。果てしない夢を持って、その夢をどうしても形にしていくと思い続けていることである。
  • 技術は未熟でも良い。最初は足りないところがあっても、顧客や市場の要望に合わせてどんどん改良していけば良い。大事なのは、人より早くということと、それをやり抜くガッツである。そのためには人の何倍も働く心がないとだめだ。
  • 経営者にはもう一つ大事なことがある。それは仕事をエンジョイしていることだ。努力して、工夫して製品あるいはビジネスモデルを良くしていくことが楽しくて仕方がない、という思いを持つことだ。
  • 良い製品を作って会社を大きくするという夢への思い。事業の困難さも、この「思い」の強さが突破させてくれる。そういう経営者と社員の士気の高さこそが、企業にとっての最大の財産だろう。

「日経ビジネス」2015.10.12号

世界一との差を自覚する 金井誠太(マツダ会長)

  • マツダが社運を賭けて開発に臨んだ、当時の新型車アテンザの主査に選ばれた際「最高で超一流、最低でも一流」というマツダらしさを強く打ち出した目標を掲げた。
  • 世界一とは何かがはっきりしないと単なるスローガンになってしまうため、世界中からライバルになる車を買い集め、徹底的に試乗し、計測し、分解した。どうすれば超えられるか、必ず数字で根拠を説明し、突破策を提案してもらった。
  • 最初は解析と模倣でも構わない。
    それで最低線の「一流」にはなれる。
    「なぜこんなことができるんだ?」と必死に考えることにより、独自の方法を見出し、それが「超一流」への道を開く。
  • 世界一と向き合えば、誰でも自分は負けていると自覚できる。心底打ちのめされ、「技術者としていつかは勝ちたい」という思いが、製品開発を支え、それが世界一への原動力になる。

「日経ビジネス」2015.9.21号

現状維持では永続しない 杉原博茂(日本オラクル社長)

  • 私の持論は「企業は常に変革していないとダメだ」である。現状維持のまま衰退していくのか、もしくは変革し続けて生き延びていけるのか、という危機感を常に持っている。
  • 紙面では、多くの企業が2桁の利益増を達成しているが、その中でも勝ち続けていくのは、好調な時期でも瀬戸際と感じて変化を続けようとする企業である。日本の社会には多種多様な課題があり、頭ではわかっていても行動に移せない経営者は少なくない。
  • 現状維持では永続できないという危機感を社員に持たせつつ、一方で「何のために変わるのか」という志も大事にしてもらいたいと考えている。やはり志がないと人間は動かないものである。
  • 昔の日本の経営者たちは、規律というか、哲学のようなものが企業経営の基盤にあったように感じる。
    単に前例を踏襲するサラリーマン的な生き方を続けていては、企業も社会も変わらない。

「日経ビジネス」2015.8.24号

駅伝優勝を支えたビジネス経験 原晋(青山学院大学駅伝監督)

  • 陸上競技固有の指導ノウハウというものは勿論あるが、人を成長させる仕組みや、目標に向かう心構えといったものは、全て会社員時代に学んだ。その1つが目標管理である。
  • 5区を走った神野は、目標管理シートに「区間賞78分30秒」と記載し、その目標を達成するための具体的な項目を8つ書き出した。これをどれ位達成できたかを、月1回の目標管理ミーティングで話し合う。
    選手同士がお互いのシートを交換し、どうしたらいいかを共に考えていく。
    毎朝では「一言スピーチ」もやっている。なぜこんなことをやるかというと、自分で考えて自分の思いで動く人間に育てたいからである。
  • 変革の過程では抵抗勢力も生まれるが、正しいことは目的であり、箱根に出ることである。出るためには制約もいる。
  • 組織のミッションに同意するかどうかは本人が決めること。チームの原点はプロセス重視と目標管理。
    そこを忠実に守りたい。

「日経トップリーダー」2015.8月号

真因を見極める 大西洋(三越伊勢丹HD社長)

  • 百貨店が弱体化した要因は、外的な環境以上に百貨店の「中」にあると感じている。それが、「同質化」と「販売力の低下」である。
  • 同質化が進むと自らでリスクを負わなくなり、新たな価値提案ができなくなる。同質化を裏返すと独自性。そこで独自性を磨き、販売力を取り戻すための改革に着手した。
  • 新しい価値を提案するために、お客様が求めるものを知ろうとする姿勢は、伊勢丹のあらゆる業務フローに根付いている。会議では「他と何が違うのか?」と非常に厳しく問われる。1つのことについて精度を高める科学的な分析と、先端を走る感性。この両輪を駆使して、ブランドを構築してきた。
  • 改革を迫られた時、多くの経営者が頭を悩ますのは、何を守り、何を壊すかということ。私はその解をお客様が期待する店の姿を知ることに求めた。言い換えればブランドの強みを知ることが改革の一歩である。

「日経ビジネス」2015.6.22号

若手育成に続ける「時然後言」 山内雅喜(ヤマトHD社長)

  • 若者が集まるミーティングで話が終わるたびに、「面白いけど、ここはどうなの?」「もう少し工夫できないか?」などと問いを投げかけている。答えがわかっていても、黙っている。若手たちに、自分で考える習慣を身につけさせるためだ。
  • 意見交換会も重ねる。無理やり順番に発言させ、なるべく「とんでもない意見」を求める。何か結論を出すためではなく、若手が発言しやすいテーマにして、自分で考える場を受け継いで欲しいからだ。
  • 「時然後言。人不厭其言」物を言わないのではなく、言うべきときに言う。そうすれば、人はその言葉に厭とは感じないという意味だ。
    ただ話しまくるのではなく、相手が納得できるときに語ればいい。
  • IT化が進んでいるが、人間中心で現場第一。デジタル時代でも、アナログのコミュニケーションを大事にして、「こうみえるかもしれないが、こうではないか?」といった問いを、絶えず続けていく。

「プレジデント」2015.6.29号

斜陽産業での生き残り方 島正博(島精機製作所社長)

  • わが社は繊維産業という典型的な成熟分野で商売をしている。いくら圧倒的な技術やサービスに差をつけてもお客様の数が減ってしまえば、会社は成長できない。
  • ではどうしているかというと、私の考えはシンプルである。お客様にどんどん儲けてもらって、市場の成熟を食い止めればいい。そのためにお客様が高く売れ、かつコストも抑えられる製品を当社は考えてきた。
  • お客様が儲かる製品を作るだけでは不十分。お客様に「なるほど。確かに儲かりそうだから使ってみよう」と思わせなければならない。当社では自社の製品を使い、付加価値の高い「儲かる服」を作ることで、説得力のある広報活動を行っている。
  • 消費者のニーズが多様化し、魅力的な製品をタイムリーに提供することが大切だが、まずお客様がどうすれば得するかを考える。英語で言うと、ギブ&テイクではなく、ギブ&ギブン。これが斜陽産業で生きていく会社の鉄則である。

「日経トップリーダー」2014.8月号

商機は当たり前の裏側にある 澤田秀雄(エイチ・アイ・エス会長)

  • これまでの事業は、どれも他の人が当たり前だと思っていることを疑う所から始まっている。小さな資金力やブランドから事業を立ち上げるためには、人と違った見方で新しい需要を見つけなくてはならない。
  • 自分には物事の一面しか見えていないということを絶えず認識する必要がある。同じ物事をどういう角度で見ているのか、他の人の意見を聞くことで思考の枠が外れていく。
  • 既存のルールでうまくいかない時は、見切り発車で事業を始めるくらいの思い切りが必要だ。そのためには大義名分が欠かせない。我々に理があればいずれルールは変わる。
  • 思考の枠を外すためのもう一つの手段は、数字を見ることである。数字はウソをつかないので、余計な常識が入り込む隙がない。目にした変化が何を意味するのか、事業で得る情報から何を読み解くのか。大きな流れを掴むためには、一旦俯瞰して複数の情報を組み合わせればよい。

「日経トップリーダー」2014.4.7月号

目標設定に大切な3つの視点 東川広伸(自創経営センター)

  • 目標を具体的に設定する場合、「目的」「内容」「出来栄え」の3つの視点を持つことが重要である。目的とは何のために目標を立てるのかをはっきりさせること。当たり前のように思えるが、これを忘れると目標がずれてしまう恐れがある。
  • 内容とは、何をするか具体的な行動を定めることを意味する。内容を決めたら目的と因果関係にあるかを必ずチェックすることが必要だ。
  • 出来栄えとは、目標を達成した場合、最終的に結果がどうなっているかを明示すること。出来栄えを設定する際のポイントは測定可能なものにすることである。これには「数値化」「状態化」「時間化」という尺度で捉えると良い。
  • 目標を定める際にもう一つ大切なのは、今の仕事より適度に難易度を高くすることである。社員の成長を促すなら、目的・内容・出来栄えが明確で、現状より適度にハードルが高い目標を社員に設定してもらうことが重要である。

「日経トップリーダー」2014.3月号

当事者意識を高める 松井忠三(良品計画CEO)

  • やる気を失う理由は様々だが、どんな状況に置かれてもやる気を失わない人もいる。その違いは、当事者意識にある。すなわち会社の状況が他人事ではなく、自分のことだと思えるかどうかである。
  • 当事者意識を高めるためには、とにかく経験を積むこと。それもハードルの高い仕事をすることである。結果を出し、それを見届けるまでが自分の役割と自覚して1つ1つの業務に臨むこと。そうすれば立場が上がるにつれて責任感と当事者意識が高まる道筋を作れる。
  • 私は新しいことに挑戦する時は必ず入念な準備を心がけている。1人1人性格は違うし、仕事のやり方も違う。それを丁寧にほどいて結果を出すための戦略やストーリーを描くことが大切である。
  • 社員の意識を根本から変えたいなら、訓示を垂れたりするよりも、仕組みを作る方が効果的。行動を変えざるを得ない環境を、まず作ってしまえば良い。

「日経ビジネス」2012.11.26月号

反復力とプロセスで人を育てる 高原豪久(ユニ・チャーム社長)

  • 社員を育てるコツを一言で述べるなら「反復力」である。反復こそが人の能力を育て、深化させる。その中で正しい仕事の仕方、効率的な考え方を定着させられれば、誰もが優れた人材に育つ。
  • 当社では仕事の進め方に注目し、部署全員にプロセスを開示してもらっている。具体的には1週間の目標を立て、それに基づいて行動計画を紙に落とし込む。目標が達成できなかった場合、なぜできなかったのかを検証し、翌週の行動に反映させる。
  • 言葉だけなら何とでも言えるが、プロセスを見れば、行動を伴っているかは一目瞭然。効果があると分かっていて実行しないのは、知らないと同じことである。
  • 経営者は社員の方向性を一致させる力が必要である。会社の考え方はこうで、私たちの進むべき道はこうだと。社員にどれだけ伝わるかは、とにかく短い言葉の中に、キーワードを盛り込めるかにかかっている。

「日経トップリーダー」2013.10月号

カンの磨き方 坂本孝(俺の(株)代表取締役)

  • カンは、ケーススタディを積み重ねることで養われる。その人の経験値が高ければ高いほど、過去の実績や実例に基づいた判断ができる。つまりカンが冴えてくるわけである。
  • 経営における重要なジャッジをする場面では、統計学よりもカンの方が当てになる。日頃から物事をよく観察し、それについて自分の頭で考え抜く訓練をする。天性のカンなんてものはない。カンは訓練して磨くものである。
  • ちょっとした違いに気づける感覚というのは、カンを構成する上で大事な要素。だから同じ景色に慣れてはいけない。カンは鈍る。常に“異質なもの”の中に自分の身を置くように心がけるべきである。
  • 自分なりのアンテナを持つこと。そのためには自分の足で歩かなきゃいけないし、直接見て触れなくてはダメ。いま流行っているものには、必ずどこかに前兆が現れる。その前兆を探し続けることで勝機を掴むためのカンも磨かれるのである。

「PHP Business THE21」2013.10月号

任せることで人を育てる 松本晃(カルビー会長兼CEO)

  • 従業員が育たないのはトップの責任である。経営者がしっかりした環境を用意すれば人材は育つ。環境を作るためのポイントは、端的に言えば“任せる"ことである。
  • 目的と権限を与えて、後は従業員自身にやらせてみせる。具体的な方法としては、①プロジェクトのリーダーを選び、②メンバーを絞り、③リーダーの責任を明確にすること。「少数精鋭」だからプロジェクトが成功するのではなく、「少数」にするから結果的に精鋭が育つのである。
  • 一旦任せたら、トップはできるだけ口出しせず、我慢することが重要である。従業員自身が考え抜いて局面を打開するのを見届けなければ、“指示待ち"体質は解消されない。とはいえ、漫然といつまでも任せっぱなしではなく、1年以内に目が出なければ打ち切るべきである。
  • プロジェクトを立ち上げて目的と権限をリーダーに与え、後は任せて我慢強く見守る。人を育てるにはこれを繰り返すしかない。

「日経トップリーダー」2013.8月号

「驚き」を仕掛ける経営 曽我弘(KAPIONパートナーズ代表)

  • 米国と日本の違いは何か。浮かんだ言葉は「驚き(サプライズ)」である。日本の経営者たちに今欠けているのが、この「驚くこと」、「驚かせること」なのである。
  • 身近な例で言えば、サプライズパーティー。忙しい最中でも準備が楽しいのは、相手に喜んでもらいたいからである。あの高揚した気持ちは、ビジネスを起こす力と似ている。
    すなわち驚かせ上手な人ほど商才があるともいえる。
  • その意味では、アップルのスティーブ・ジョブズ氏は最高峰である。決して独善的ではない。相手の気持ちを「理解」したうえで、周囲の人たちの「常識」を超えている…。サプライズにはこれが大切なのである。
  • 日本の経営者は優秀だが、なかなか驚かせてくれない。事業内容も目標設定も控えめ。これでは周りも、やっている本人も楽しくないだろう。
    ジョブズ氏はサプライズを楽しんでいた。日本の経営者にも是非、サプライズを仕掛けてもらいたい。

「日経ビジネス」2013.7.22号

値引きはしないと決断する 渡辺良機(東海バネ工業社長)

  • 当社は、売上高営業利益率が10%を超え、しかも70期連続で黒字を続けている。高い利益率を継続している理由は「高くても売れる」ことにこだわってきたからだ。
  • 何よりも大切なのは、トップが「値引き販売しない」と決断することである。トップが決断しなければ、営業の社員が値下げ要請を断ることはできない。まずは経営者が腹を括ること。すべてはそこから始まる。
  • 値下げ要請を断るのは、自社のためだけではない。断ることで、取引の長さや受注額に関わらずお客様のプライオリティを等しくできる。自分たちの技術と労力に対して、適正な価格で買ってもらうことに後ろめたさや遠慮を感じる必要はない。
  • 断る勇気を持つ。そのためには原動力となる社員のモチベーションアップが不可欠である。社員一人ひとりが誇りを持って働けるような環境や成功体験を与えてやることが意識改革の助けとなってくる。

「日経トップリーダー」2013.7号

ブランド構築と「コトづくり」 カルロス・ゴーン(日産自動車CEO)

  • ニッサンブランドには固有のブランドプロミス、すなわち顧客との約束がある。それは「ワクワク感」「革新性」「すべての人に」である。
  • リーダーにとって、ブランドをしっかりと定義することは、社内の力を合わせるという意味でも極めて重要だ。1つのブランドを定義することで、ベクトルが同じ方向を向くからである。
  • ブランドの魅力を消費者に伝えるために、日産では「コトづくり」に注力している。コトづくりとは、ストーリーを語り、お客様との対話を実現すること。ブランドとは、製品のことだけを指すのではない。人の情緒に強く訴えることが、ブランドを作り上げることにつながる。
  • 顧客はどうしたらストーリーに注目してくれるかというと、まずは「面白い」ことが大前提である。もうひとつは「顧客を謙虚な姿勢で知る」ということ。適切なコミュニケーション・チャンネルと楽しいストーリーを兼ね備えていることが大切だ。

「日経ビジネス」2013.5.27号

ビジネスに必要な教養と価値観 陰山英男(立命館大学教授)

  • 教養や学力というものを語る上で、「好奇心」は大切なカギとなる。
    何かを体験するたびに「面白い!」と思える感性があれば、見聞きした知識は頭にずっと残るし、その積み重ねが教養となる。
  • これからの教養は、戦略性を持つことである。教養や学力というものが、自分の仕事や生活とは別の次元にあるかのように捉えている人もいるが、私は「すべての知性は実用性を伴っていないと本物にならない」と考えている。
  • 他人の価値観で生きるという傾向は、ビジネスの世界でも顕著になっている。他人の価値観に頼っているうちは、革命的な製品は生まれない。
    ここに日本低迷の大きな要因が潜んでいる。
  • 日本人は、もっと自分の価値観を大事にしていい。「自分が好きなこと」をしてよい。「他人に喜びを与える」という行為は、「自分が好きなことをする」という延長線上にしか存在しない。

「THE21」2013.4月号

創造的瞬間を経る 石井淳蔵(流通科学大学学長)

  • 人はいつも現実の延長線上に物事を考える習性を持っている。しかし経営者がそんなふうに考えていては、その組織は持たない。今、この書斎のドアを開けると想像もできない世界が広がっているかもしれないと常々気に留めていないといけない。
  • 経営者の仕事は、跳ぶことにある。何でもいいから跳んでみろということではない。自身で確信を持ち、人に説得できるような未来像を持って跳ばないといけない。
  • それまでどうしてもできなかったことが、ある瞬間、できるようになる。そこで初めて意味のある知識が形成される。創造的瞬間を経ることで、人は確信を持って跳ぶことができるし、人や組織を説得する意欲や根拠も生まれてくる。
  • 創造的瞬間を得るためには、対象に棲み込み、対象と深い深度で交流することである。対象が人であれば、その人の身になって考える。この経験を積むことは、人間同様、企業が生きていく上でも大事である。

「プレジデント」2013.4.15号

責任の所在と経営者のあり方 安藤宏基(日清食品HD CEO)

  • 新製品が予想以上に売れた時や大きな損失を出した時、日清では各部署の担当者を集めて「解剖会議」をやる。失敗した場合なら、死因は何々ですかと。
  • 理由は沢山挙がってくる。それらを全部解析し、責任の所在を明確にしていく。組織というのは無責任なものである。だから物事の責任は組織ではなく個人に帰さなきゃダメ。そのかわり責任の所在さえ明確にすれば、チャレンジする機会はいくらでも得られるようにしている。
  • 私は220人の管理職全員と年に1回、じかに面接をしている。その社員が今期、何を学んだかという経営資質が最も重要なポイントである。じかに話をすることで、社員の成長や問題を抱えている部分が分かる。
  • 経営者にとって重要なのは、軸がぶれないこと。社長がああだこうだと言うと、会社は揺らぐ。これは良いと決めたことは、一定の答えが出るまで徹底し、文句は言わない。

「日経ビジネス」2012.12.3号

経営の両輪を意識する 中川淳(中川政七商店社長)

  • 経営とは会社の状況を正確に把握し、必要な施策をしかるべき順番で実行することである。状況把握が正確にできれば、問題の7割は解決したに等しい。
  • 商売には、ものを売るという前輪とそれを支える仕組み(流通、生産管理、業務システム等)の後輪がある。ほとんどの企業は前輪以上に後輪に問題を抱えている。にも関わらず、そこに対する問題意識は低い。
  • 新商品よりも業務改善の方が、確実に経営の改善に結びつく。業務フローは最適か?無駄な支出はないか?100万円のコストダウンは営業利益10%の会社であれば、1,000万円の売上にも匹敵する。
  • 現代は「共感」の時代である。必要不可欠なものは一通り持っている。それを超えて消費者がものを買うのは、そのものだけでなく、その背景にあるストーリーや考え方に共感しているからである。逆にそこに共感できなければ、いくら魅力的なものであっても買ってはもらえない。

中川淳著「小さな会社の生きる道」

ビジョンの設定と創造経営 星野佳路(星野リゾート社長)

  • 1992年に「リゾート運営の達人になる」というビジョンを掲げた。報酬や休日を増やせない中で、人材獲得のために何ができるかというと、将来の夢を語ることだけだった。
  • 夢で人は集まるのだろうかとも思ったが、スタッフが少しずつ集まり始め、次第に事業面でも成果が出始めた。今でもスタッフは私や会社ではなく、ビジョンに対してロイヤリティを感じてくれている。
  • 数字目標で一番難しいのは満足度と利益率の両立。効率化とは満足度を犠牲にして利益を上げることではない。生産性を上げることで、新しい魅力の創造、労働環境の整備につなげ、それが満足度と利益率の両立につながっていくのである。
  • よい経営とは長期的に競争力を維持し、社員とその家族が安定的に生活できる環境を守ること。そうであるとすれば、会社にとってリスクがあっても、社員にとって辛くても、やるべきことをやるということが必要である。

首藤明敏編[ぶれない経営]ダイヤモンド社

経営の普遍的な法則 吉川廣和(DOWA 相談役)

  • 企業経営には常にリスクがつきまとう。だから、いつもセンサーを働かせて、できる限り情報を集めている。予期せぬことを肝に銘じ、経営者としては最大のリスクに備えなければならない。
  • 会社に決定的なダメージを与える筆頭は、社風のリスクだ。社員の心が保守マインドに変わっていくこと、以前の隠ぺい体質に逆戻りすることは、DOWAにとって最大のリスクだと考えている。
  • 選択と集中を進めるためには、撤退する事業、継続する事業を迅速に決めなければならない。その基準は「マーケットの成長性」、「当社の技術力」、「社員のやる気」の3つである。たとえ黒字事業であっても、3つの基準の1つでも欠けていれば撤退を決める。
  • 改革という行動に移るためには、裏付けのデータが必要だ。重要なのは、実践しながらデータに基づいてチェックすること。裏付けのデータがあってこその説得力が生まれる。

「日経ビジネス」2012.11.26号

最悪な状況の想定と根源的欲求 中山譲治(第一三共社長)

  • 決断に恐怖を感じるのは、どれほどの悪いことがふりかかるのかがわかっていないから。私は決断をした時に起こり得る最悪な状況とは何かを常に書き出して眺めている。
  • このように現実を突きつけてみると、暗い気持ちになりそうだが、実際はその逆。“まぁ、せいぜいこの程度か”“命までとられることはないだろう”と勇気が出てきて、決断できるのである。
  • 素晴らしい仲間と楽しく仕事ができ、死ぬ時に“おもろかった”と思える。それが医薬の道であればなおさらよい。これが私の根源的欲求である。そのためには、攻めていくことが必要だという結論に自然と辿り着く。
  • 攻めていれば、それだけ失敗をする経験も増えてくる。しかし攻めなければ何もつかめない。その勇気を持つためには、自分の根源的欲求を見つめ直すこと。そしてその欲求を意識することである。

「PHP Business THE21」2012.11月号

メッセージを伝え行動で示す木川眞(ヤマトHD 社長)

  • ヤマト運輸の社長に就いた年、私は改革を進める上で、1年ごとにわかりやすいキャッチフレーズをつけた。「チェンジ(1年目)」「チャレンジ(2年目)」「チャンス(3年目)」などである。
  • このわかりやすさこそ重要だ。伝える努力をせず、現場ができていないと怒っても仕方がない。まず経営者がメッセージを伝える努力をすること。それが私にとってはキャッチフレーズだったのだ。
  • 言葉と同時に行動で示すこと。必要な時に思い切った決断をし、企業の経営方針を体現することも経営者には求められる。行動が伝えるメッセージは言葉以上に強い。
  • 経営とは取捨選択の連続だ。その中で私を突き動かしてきたのは、「為さざるの罪」という言葉である。正しいと信じたら失敗を恐れず行動する。何もせずに文句ばかり言うのは罪である。不適切な局面で使うと組織は暴走するが、ヤマトグループではこの言葉が生きる。

「日経ビジネス」2012.8.27号

変化を起こし進化につなげる正垣泰彦(サイゼリヤ会長)

  • 思い描いていたのとは逆の結果が出たときは、考え方を修正する必要がある。考えを変えたり反省したりすることを失敗というならば、失敗した方が結果的には成功する。
  • 今、最も力を入れていることは、今までやってきたことを変えること。成功体験にとらわれず、もっと進化しなきゃいけない。お客さんにいいものを値頃感のある価格で出す。そのためのカイゼンを進めている。
  • 生産性を向上する余地は、無限にある。無駄は削れば削るほど社員の作業が楽になるから、どこまでも削った方が良い。「絶対にやる仕事」と「やってはいけない仕事」に二分し、絶対的にやる仕事だけを徹底的に遂行する。
  • 重要なのは、いかによりよく進化させるかである。過去を引きずっていても仕方がない。改革して、新しい取り組みを始めること。世の中はどんどん変わっていく。ビジネスも含めて、何かが起こればそれはチャンスに転換できる。変化することが大事なのである。

「日経ビジネス」2012.8.27号

JAL再生とリーダの資質 稲盛和夫(日本航空名誉会長)

  • JALを再生させることには、3つの大義があると考えた。①日本経済のため②社員のため③利用者のためである。この大義に突き動かされ、私は会長を引き受けることにした。
  • 再生のために、JALに持ってきたのは2つだけ。1つは、会社の組織を10人前後の小集団に分け、独立採算制を徹底させる「アメーバ経営」。
    もう1つは、経営者を含め全社員が同じ価値観を共有し、行動するための指針である「フィロソフィ」である。
  • JALの企業理念は、京セラと同様「全社員の物心両面の幸福を追求する」である。社員が喜んで仕事をして立派な業績を挙げれば、株主価値は上がる。逆に社員すら幸せにできない会社が、うまく経営できるわけがない。
  • 企業のリーダーは「人間としてまず何が正しいのか」ということを判断基準にしなければならない。正しい判断をするために必要な人間性は、全力で仕事に打ち込むことによって磨かれる。

「プレジデント」2012.8.13号

書いて、歩いて、良心で決断 馬瀬紀夫(ハーゲンダッツジャパン社長)

  • 経営者の仕事とは、突き詰めれば「決断を下す」ことである。私は最善の決断を下せるように「書く」と「歩く」ことを取り入れている。
  • まずはとにかく情報を集めること。あらゆる情報を1冊のノートにまとめ、それも手書きであることが重要だ。ノートを見返せば、自分が当時どんな結論に至ったのかがわかり、現在の判断に役立つことが多い。
  • しかしどんなに情報を集約・整理しても迷うことはある。そんな難しい判断を迫られた時、私は歩くようにしている。歩いていると、徐々に頭が冴え、客観的に物事を捉えて、冷静な判断が下せるようになる。
  • それでも迷うことがあれば、私は自分の良心に従うことにしている。
    私の良心がどう判じるか。これを自身に問うて決断を下していく。経営者はこうあるべきだし、だからこそ「哲学」が必要となるのである。
    歩くことは私にとって、自分の哲学を問い直す時間でもあるのだ。

「日経ビジネス」2011.12.12号

経営の新CSRとリスク対応 泉谷直木(アサヒグループHD社長)

  • 私にとっての「CSR」とは、従来の“企業の社会的責任”ではなく、「C」はチャレンジ、「S」はストレッチ、「R」はリスクを意味する。
    チャレンジ、ストレッチで業務を拡大する一方で、リスクをしっかりと織り込む必要がある。
  • リスクへの対応には「3つの経営資源」の含み益が大事だ。
    ①人材②商品や技術③新市場の3つである。
    この3つの含み益を持っていれば、何かが起こった時にも対応できる。
  • 少子高齢化は事実であるが、暗い立場にある必要はない。
    今の現実にあった形で市場がどう変化するのか、嗜好がどう変化するのか、そこに適した商品とサービスをどうしていくか。そこを議論していけばいい。
  • 気をつけないといけないのは、風潮に流されて、ちゃんとした定義をしないこと。
    要するに数字に置き換えない、きわめて抽象的な議論がある種の閉塞感を生んでしまうのである。データを基に分析していけば、課題に立ち向かうことはできるのだ。

「日経ビジネス」2012.5.28号

利益を上げて価値創造の輪を作る 永森重信(日本電産社長)

  • 企業経営で最も大事なのは、企業の価値を創造し続ける
    「輪」を創ること。輪とは、財務価値→人材価値→顧客にとっての価値→市場価値の連鎖のことである。
  • 企業の成長の第一歩は利益を上げることである。利益を上げれば、次の設備やヒトへの投資ができ、売上高を伸ばせる。
    売上高を伸ばして利益を上げるのではなく、利益を上げるから売上高も増やせるのである。
  • その過程では「なぜ、利益が出ないのか」を自ら考え、動く社員を育てることも大事である。
    コスト、利益などへの社員の意識を高め、士気を高める。これが「人材価値」の向上である。
  • 財務と人材の価値が上がれば、新製品の開発やより購入しやすい価格での提供といった「顧客にとっての価値」を向上できる。
    ここまでできれば「市場価値」も高まり、よりよい人材や低いコストの資金も集まり易くなる。
    この価値創造の循環が企業に次の利益をもたらすのである。

「日経ビジネス」2012.1.9号

三つの問いかけ 加瀬豊(双日代表取締役会長)

  • 上司は「問いかけ」をするのが仕事。問いかけをしなければ仕事をしていないとさえいえる。
    実際、部下に課題やノルマを与えるとき、私はいつも「三つの問いかけ」をするように努めている。
  • 最初の問いかけは
    「なぜ、そうなったの?」
    であり、第二の問いかけは
    「それで君自身、どう思っているの?」
    である。そして最後に
    「では、どうしたいの?」
    と問いかける。
  • ここで部下から「こうしたい」という提案が出るのを待つ。
    答えを聞く前に上から指示をしてしまえば、部下の成長は止まってしまうし、自発的に仕事に取り組む意欲も引き出すことができない。
    このように部下を自発型・提案型となるように仕向ける…
    これが私のやり方である。
  • 上司としては当然、任せきりではなく「俺も一緒にやる」という姿勢と事後のフォローも必要だ。
    「最終責任は自分が負う」と腹を決めて、その限度内におさまるうちは、なるべく部下の自主性に任せるのである。

「プレジデント」2011.1.31号

人を大切にする経営 坂本光司(法政大学教授)

  • 私は企業経営を「5人に対する使命と責任を果たすための活動」と定義している。5人とは、
    ① 社員とその家族
    ② 外注・下請先の社員
    ③ 顧客
    ④ 地域社会の住民
    ⑤ 株主

    を指す。 
  • この原理原則を守っていれば、売上や利益はその結果として生まれてくるものだ。
    私が企業を訪問する際にも、数字には現れない“空気”を見るようにしている。 
  • 景気低迷の中でも伸びている会社は、大小に関わらず、必ず人を大切にしている。
    消費者も値段や品揃え以上に、その会社が社会に貢献しているか、正しいことを行っているかという物差しで判断するように意識が変わってきた。
    大震災以降、さらにその傾向は強まっているようだ。 
  • ぶれない経営を続けている会社には、いくつかの共通点がある。
    もちろん、人を大事にすることは一番の条件だ。
    2つ目は種まきをしているということ。市場や顧客、感動を自ら創造しようと取り組んでおり、決して「対応型」の企業ではない。

「日経ビジネス」2012.3.5号

急成長のカギ トニー・シェイ(ザッポスCEO)

  • 急成長の最大のカギはリピート客と口コミである。
    経験を経るにつれて、カスタマーサービスや顧客体験に投資するほど顧客のロイヤルティが高まることを実感している。
  • たとえば当社には無い靴の注文を受けたスタッフはどうするか。
    競合他社を最低三つは取り上げて、一緒に靴を探し、見つけたらその会社を教えてあげる。
    1足の売上は逃してしまっても、長期的に見てその顧客は当社に利益をもたらしてくれるだろう。
  • 顧客にとってその時点でベストなサービスは何かを考え、ブランドのために良いことをする権限を従業員に与え、彼らが能動的に動ける環境が当社には用意されている。
  • 素晴らしいアイディアというのは会議から出てくるわけではない。
    仕事を終え、町に出て、リラックスしながらバックグラウンドの異なる人々やコミュニティと意見を交わし合う。
    そこから革新的なアイディアや結果が生み出されるのである。

「週刊ダイヤモンド」2012.1.14号

商機と市場の見つけ方 岡藤正広(伊藤忠商事社長)

  • 若い部下に「現場に行け」というと「用もないのに何をすればいいのか」と悩む人間がいる。
    用件は無くとも目的は必要だ。
    私の場合は、お客さんの普段の様子を意識して記憶するようにしている。
  • お客さんの所に足を運び続けていると「平時は大体こんなものか」とわかる一方、お客さんの変化にもすぐに気づくことができる。
    そこから新たな商売につながることが往々にしてある。
  • 現場で商売のネタを拾える営業社員というのは、こうした状況を常につくっている。
    できる人間は変化に気づく。
    儲け話の切り口も鋭い。
    商売は有事になってから動き出しても手遅れなのだ。
  • 案外自分たちが今手がけている商売を否定したところに明るい新市場があるかもしれない。
    常に「今の商売だけでいいのか」という客観的な目線が必要だ。

「日経ビジネス」2011.10.10号

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東京地方税理士会所属

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